支部長挨拶

平成23年度土木学会中部支部の支部長を務めさせていただくことになりました,名古屋大学の伊藤義人です.この1年間,土木学会の発展のために尽力したいと思っております.

まず,平成23年3月11日に発生した東日本大震災でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに,被災にあわれてご苦労をされている方々およびそのご家族の方々に心よりお見舞い申し上げます.

今回は,津波被害が甚大であり,想定外の高さのものが来たとも言われています.しかし,896年の貞観地震(M8.4)の津波については,ここ数年の古地震の研究によって今回と似た津波であったことが分かってきており,このことはマスコミにも一部報道されていました。すなわち、完全な未知の領域ではなく,十分に周知されず未想定であったということでした.大津波の被害を防潮堤などの構造物だけで防ぐことは困難であり,地震直後に高さを確保するように避難することによる減災が不可欠であることは,従来からも言われていました.もちろん,原子力発電所のような重要施設に関しては,電源の全喪失などによる重大事故を防ぐための何らかの別の方策を考えておくべきであったことは最近始まっている対策の動きからも明らかとなっています.耐震工学では,想定している最大地震動に対して,機能性と経済性で最適設計をすることが従来の考え方でしたが,それを超える場合の減災対応策も取り入れることが求められているといえます.土木工学においても,この分野へのさらなる貢献が求められているといえます.

21世紀は,「環境」,「安全」,「健康」がキーワードであると世界的に言われています.この3つのキーワード全てに土木工学分野は関わっています.しかし,国の公共投資が急減する中で,公共事業の縮小と建設系の会社の淘汰が進むといわれ,土木系学科を卒業しても,将来,地図に残るような魅力的な仕事ができないと高校生は思い始めています.また,建設業に関わるマスコミ記事などにより,社会が持つ建設業のイメージは,悪くなることはあっても,改善する状況にはありません.

東京スカイツリーやリニア中央新幹線などのような,建設業にとって明るい話題はあっても,職業として積極的に建設業を選ぶ学生は減少の一途です.一部の大学の土木系学科では,このような状況の中で,ここ数年,入学者数が入学定員数を割り続けています.さらに,土木系学科や大学院を卒業・修了しても,建設業以外に就職する傾向も出ています.その結果,中部地区においては,建設業における土木系の人材要求があっても,土木系学科の卒業生をとれず,他の学科の卒業生を採用せざるをえないミスマッチも生じているといわれています.

我が国は少子化が進み,理系離れ,工学離れとも相まって,このままでは建設業に携わろうとする若い人材が減少していくことは目に見えています.そこで,このような状況を打開するためのあらゆる方策を検討する「土木分野における若手人材育成に関する検討委員会」を支部長特命委員会として今年度立ち上げました.すなわち,土木系教育プログラムを学んだ卒業生・修了生が,国内外で,土木技術者として自信と誇りを持って仕事ができる環境を,土木学会中部支部が中心となり,産官学が知恵を絞って作り出すための方策を検討することをこの委員会は目的としています.

この委員会での検討項目自体も委員会で検討しますが,以下のような項目を現時点で挙げることができます.
1)少子化時代における土木系分野の魅力造りと国際化
2)土木系教育プログラムの再構築と今後の中部地区の土木系教育のあり方
3)インフラ整備とその維持管理のあり方と国民の理解獲得
4)上記を踏まえた中部地区で行える土木系の若手人材育成方策

今年度中に一定の結論を得て報告書を作る予定をしております.皆様のご協力をお願い申し上げます.

平成23年度土木学会中部支部長
伊藤 義人
(名古屋大学 教授)

中部支部会員数

2011年5月末日現在の土木学会中部支部会員数は、下表の通りです。

正会員 個人 2,706名
法人 40団体
学生会員 767名
特別会員 47団体
合計 3,513名
フェロー会員 140名
名誉会員 24名

歴代支部長および幹事長

歴代の支部長および幹事長一覧は以下からご覧ください。